「大学に進学するなら、奨学金を借りればいい」
教育費が高くなる中、そう考える家庭もあるでしょう。
奨学金は、経済的な理由で進学をあきらめないための大切な制度です。
一方で、貸与型の奨学金は、卒業後に返還していかなければならないお金です。
大学にいる間は毎月の生活費や学費を支えてくれる存在でも、卒業すれば、そのお金は「返済」という形で本人の家計に戻ってきます。
社会人になってから、
- 思っていたより収入が少ない
- 就職先を辞めた
- 転職して収入が減った
- 結婚や出産で支出が増えた
- 病気やケガで働けなくなった
といったことが起きれば、奨学金の返済が負担になる可能性もあります。
だからこそ、親として考えたいのは、
「大学に行かせるために、いくら借りられるか」ではなく、「卒業後に無理なく返せる金額はいくらなのか」
ということです。
この記事では、奨学金の返済がなぜ負担になり得るのか、教育費と借金について親が知っておきたいことを解説します。
奨学金は「もらえるお金」ではない

まず知っておきたいのが、奨学金には大きく分けて、
- 給付型
- 貸与型
があることです。
給付型は、要件を満たせば原則として返還する必要がありません。
一方、貸与型は学生が借りるお金であり、卒業後などに返還していきます。
つまり、
貸与型奨学金は「教育費のローン」の一種と考えることができます。
「奨学金」という名前から、一般的な借金よりも軽く感じてしまうかもしれません。
しかし、卒業後の収入から毎月返済していく以上、将来の家計に影響する借入であることには変わりません。
奨学金の返済が苦しくなるのはなぜ?

奨学金を借りるときには、
「大学を卒業して就職すれば返せるだろう」
と考えるかもしれません。
しかし、卒業後の人生は必ずしも予定通りにはいきません。
収入が思ったほど増えない
大学を卒業したからといって、高収入の仕事に就けるとは限りません。
毎月の手取り収入から、
- 家賃
- 食費
- 光熱費
- 通信費
- 交通費
- 保険
- 奨学金
などを支払う必要があります。
月1万円、2万円程度の返済でも、収入が少なければ家計に占める割合は大きくなります。
就職・転職で収入が変わる
「卒業後は安定した仕事に就く」という前提で返済計画を立てても、転職や退職によって収入が減ることがあります。
奨学金は、仕事を辞めたからといって自動的に返済がなくなるわけではありません。
だからこそ、返済が難しくなった場合に利用できる制度を知っておくことが重要です。
結婚・出産で生活費が増える
社会人になって数年すると、
- 結婚
- 出産
- 引っ越し
- 車の購入
- 住宅購入
など、まとまった支出が発生することがあります。
そこに奨学金の返済が加われば、家計に余裕がなくなることもあります。
病気やケガなどで働けなくなる
人生には、予想していなかった出来事もあります。
収入が減ったときに、
「奨学金だから何があっても返済しなければ」
と無理をするのではなく、早めに返還支援制度を確認することが大切です。
奨学金を返せないと、すぐ自己破産になる?

「奨学金が返せなくなったら自己破産するしかないのでは?」
と心配する人もいるかもしれません。
しかし、
奨学金の返済が苦しくなる=すぐに自己破産
というわけではありません。
返済が難しい場合には、状況に応じて利用できる返還支援制度があります。
重要なのは、
返済できない状態になってから放置しないこと
です。
返還が難しい場合は、滞納する前に日本学生支援機構(JASSO)などに相談し、自分が利用できる制度を確認することが大切です。
「返済できない人が増えている?」データを見るときの注意点

奨学金について、
「返済できない若者が増えている」
という話を見かけることがあります。
ただし、ここでは注意が必要です。
「返済が遅れている人」
「返済していない人」
「返済が困難な人」
「自己破産した人」
は、すべて同じではありません。
奨学金を借りる前に「卒業後の返済額」を見る

奨学金を検討するとき、最も大切なのは、
「大学4年間でいくら借りるのか」
だけではありません。
その先の、
「卒業後、毎月いくら返すことになるのか」
まで確認することです。
例えば、
大学4年間で毎月一定額を借りる
↓
4年間で借入総額が大きくなる
↓
卒業後に返済開始
↓
毎月の給与から返済
↓
家賃・生活費などと両立
という流れになります。
大学にいる間は便利に感じても、卒業後には毎月の固定的な支出になります。
だからこそ、借りる前に返済額を確認しておきましょう。
親が「必要な分だけ借りればいい」と考える危険性

奨学金は、必要な金額を借りるための制度です。
しかし、
「借りられるなら、念のため多めに借りておこう」
という考え方には注意が必要です。
借りたお金は、基本的に返さなければなりません。
例えば、大学生活で本当に必要な金額が月5万円なのに、余裕を持って月10万円借りると、卒業後に返済する金額も大きくなります。
奨学金を利用するなら、
「借りられる上限」ではなく「本当に必要な金額」
を基準にすることが重要です。
まず「返さなくていい支援」を確認する
奨学金を借りる前に、ぜひ確認したいのが国や自治体、学校などの支援制度です。
2026年現在、国の「高等教育の修学支援新制度」では、授業料・入学金の減免と返還不要の給付型奨学金によって、大学・短大・高専・専門学校などへの進学を支援しています。
さらに、2025年度からは、扶養する子どもが3人以上いる多子世帯について、所得制限なしで、大学等の授業料・入学金を国が定める一定額まで減免する制度が始まっています。
つまり、奨学金を申し込む前に、
「そもそも返済不要の支援を利用できないか?」
を確認することが大切です。
対象となる学校や支援内容には条件があるため、進学先と制度の詳細を確認しましょう。文部科学省には対象校一覧や申請手続きの案内があります。
親が教育費をすべて負担する必要はある?

ここも悩ましいところです。
「子どもの教育費は親が全部出してあげたい」
と考える家庭もあるでしょう。
もちろん、家庭の経済状況によって考え方は違います。
しかし、親が無理をして教育費をすべて負担すると、
子どもの大学卒業と同時に、親の老後資金が不足する
ということも考えられます。
40代の家庭なら、
- 教育費
- 住宅ローン
- 車
- 生活費
- 老後資金
を同時に考えなければなりません。
子どものために無理をしすぎて、親自身の生活が苦しくなるのも避けたいところです。
親が奨学金を肩代わりするのはどうする?
子どもが社会人になってから、
「奨学金の返済が大変なら親が払ってあげよう」
と考えるケースもあります。
これも一概に良い・悪いとは言えません。
例えば、
親が全額返済
子どもの負担は大きく減りますが、親の老後資金が減る可能性があります。
親が一部支援
子ども自身も返済しながら、親が無理のない範囲で支援します。
子どもが全額返済
子ども自身が責任を持って返済します。
どの方法が正しいということではありません。
大切なのは、
「親が払えるから払う」ではなく、親自身の老後資金まで含めて考えること
です。
奨学金と住宅ローンは同じ「借金」として考える

40代になってから特に意識したいのが、子どもの奨学金と親自身の住宅ローンなどが重なるケースです。
例えば、
住宅ローン
+
子どもの奨学金
+
車のローン
+
教育費
という状態になると、家計の固定的な支出が大きくなります。
一つひとつは「払える金額」でも、合計すると家計を圧迫する可能性があります。
だからこそ、
「一つの支払いなら大丈夫」ではなく、「すべて合わせて毎月いくら出ていくのか」
を見ることが大切です。
40代から教育費を準備するならどうする?
奨学金に頼る前に、できるだけ教育費を準備しておくことも重要です。
方法としては、
- 預貯金
- 児童手当の貯蓄
- 学資保険
- NISAなどを利用した資産形成
- 家計の固定費削減
- 教育費専用口座を作る
などがあります。
ただし、投資は元本保証ではありません。
大学進学など、使う時期が決まっているお金については、必要な時期に価格が下落している可能性も考える必要があります。
そのため、教育費のすべてを投資に回すのではなく、使う時期とリスクを考えて、お金を置く場所を分けることが大切です。

奨学金を借りる前に親子で話したいこと

奨学金を利用するなら、進学前に次のことを親子で確認しておきましょう。
① 4年間でいくら必要?
学費だけではなく、
- 入学金
- 教材費
- 通学費
- 家賃
- 食費
- 生活費
なども考えます。
② いくら借りる?
必要な金額を計算して、借りすぎないようにします。
③ 卒業後の返済額はいくら?
毎月の返済額と返済期間を確認します。
④ 誰が返す?
子ども本人が返すのか、親が一部支援するのか、あらかじめ話しておきます。
⑤ 返済できなくなったらどうする?
収入が減ったときなどに利用できる制度についても確認しておきます。
「大学に行かせること」と「借金を残さないこと」のバランス
子どもにはできるだけ良い教育を受けさせたい。
そう考えるのは自然なことです。
しかし、
「教育費は高くても仕方ない」
と考えて借り続けると、卒業後に子どもが返済負担を背負うことになります。
一方で、奨学金があることで進学できる家庭もあります。
だからこそ重要なのは、
奨学金を借りる・借りないの二択ではなく、「いくらなら将来無理なく返せるのか」を考えること
です。
そして、利用できる返還不要の支援があれば、まずそちらを確認する。
そのうえで不足する分だけ貸与型奨学金を検討する。
この順番で考えると、将来の返済負担を抑えやすくなります。

まとめ|教育費は「今」だけでなく「卒業後」まで考える
奨学金は、経済的な理由で進学をあきらめないための重要な制度です。
一方、貸与型の場合は、卒業後に返済していく必要があります。
そのため、
「大学に行けるか」
だけではなく、
「卒業後に無理なく返済できるか」
まで考えることが大切です。
特に40代の子育て世帯では、教育費だけでなく、
- 住宅ローン
- 車のローン
- 生活費
- 老後資金
なども同時に考える必要があります。
2026年現在は、高等教育の修学支援新制度によって授業料・入学金の減免や給付型奨学金による支援があり、多子世帯への支援も拡充されています。
だからこそ、奨学金を申し込む前に、
①返さなくていい支援を確認する
②必要な教育費を計算する
③不足分だけ借りる
④卒業後の返済額を確認する
⑤親自身の老後資金も守る
という順番で考えてみましょう。
教育費は、子どもの未来のためのお金です。
だからこそ、子どもの未来だけでなく、卒業後の生活まで含めて考えることが大切です。
「今、大学に行かせられるか」だけではなく、
「卒業後、子どもが無理なく自分の人生をスタートできるか」
まで考えることが、親にとっての教育費準備ではないでしょうか。

