「年金だけでは生活できない」
「老後も働かないと無理」
現在月15万円ほどの年金を受け取りながら孫へのお小遣いを負担する人や、年金だけでは余裕がなく、70歳前後になっても働き続ける人が高齢者が多くいます。
一方で、「働きたくても自分に合う仕事が見つからない」という人もいます。
昨今のニュースから見えてくるのは、老後資金について「いくら貯めればいいか」だけではなく、年金だけで足りないとき、どう生活を維持するのかを40代から考えておく必要があるということです。
今回は、シニア世代のリアルな声から、40代から始めたい老後資金の備えを考えます。
年金をもらっていても「生活が苦しい」理由

年金を受給している高齢者の中には月3万円台、7万円台、9万5000円、15万円程度など、さまざまな年金額の人がいます。
なかには、夫婦で月20万円程度の年金を受け取っていても、「地道に節約してもギリギリ。働いていないと絶対に無理」と話す人もいます。
もちろん、住んでいる地域や住宅ローンの有無、持ち家か賃貸か、医療費や家族構成などによって必要な生活費は大きく異なります。
ただし、老後の生活を考えるときに重要なのは、
「年金はいくらもらえるか」だけではなく、「年金で毎月の支出をどこまでカバーできるか」
という視点です。
2026年度の老齢基礎年金は、満額で月7万608円です。厚生年金については、平均的な収入で40年間働いた場合のモデルとして、夫婦2人分の基礎年金を含め月23万7279円とされています。
ただし、これはあくまでモデルケース。
自分が将来いくら受け取れるのかは、早めに確認しておきたいところです。
「老後も働けばいい」と考えるだけでは危険
年金受給者の中には年金だけでは余裕がないため働き続け、週5日勤務で月20万円以上の手取りを得て生活している方もいます。
働くことで生活にゆとりが生まれるのは大きなメリットです。
しかし、すべての人が同じように働けるとは限りません。
ハローワークやシルバー人材センターを訪れているものの、「自分に合う仕事がない」という人も多くいます。
つまり、「老後は働けばいい」という考え方だけでは、老後の生活設計として不十分です。
病気や体力の低下、家族の介護、仕事の減少などによって、働き続けられなくなる可能性も考えておく必要があります。
老後に怖いのは「毎月の赤字」だけではない

老後資金を考えるとき、
「毎月いくら生活費がかかるか」
に注目しがちです。
しかし、実際には毎月の支出以外にもお金が必要になります。
例えば、
- 家電の買い替え
- 住宅の修繕
- 車の買い替え・維持費
- 医療費
- 介護費
- 冠婚葬祭
- お盆や正月の出費
- 子どもや孫へのお祝い
- 趣味や旅行
などです。
例えばお盆に帰省した孫4人に1人1万円のお小遣いを渡す場合、毎月の生活費だけなら何とかやりくりできても、こうした「特別な支出」が重なると家計が一気に苦しくなる可能性があります。
だからこそ、老後資金は、
毎月の生活費+特別費
の両方を考えておくことが大切です。

40代から始めたい老後資金「7つの備え」

1.まず「将来の年金額」を確認する
最初にやるべきことは、老後にもらえる年金額を知ることです。
「老後は2000万円必要」
という情報だけを見て不安になるのではなく、
自分はいくら年金を受け取る予定なのか
を確認しましょう。
日本年金機構の「ねんきんネット」では、将来の年金見込額を確認できます。
例えば、
年金見込額が月15万円
老後の生活費が月25万円
なら、
毎月10万円の不足
が発生する計算です。
年間では120万円。
20年間なら単純計算で2400万円です。
もちろん実際には物価や税金、社会保険料、資産運用なども関係するため、この数字がそのまま「必要な老後資金」になるわけではありません。
それでも、「自分はいくら不足する可能性があるのか」を知ることは重要です。
2.老後の生活費を一度シミュレーションする
次に、
老後に毎月いくら必要なのか
を考えます。
現在の生活費をそのまま老後に当てはめるのではなく、
「老後になったら何が増えて、何が減るのか」
を考えてみましょう。
例えば、
減る可能性があるもの
- 住宅ローン
- 教育費
- 通勤費
- 現役時代の仕事関連費
増える可能性があるもの
- 医療費
- 介護費
- 光熱費
- 趣味・旅行費
などです。
特に住居費は老後生活を大きく左右します。

3.「特別費」を別枠で準備する
老後資金の計画では、毎月の生活費とは別に「特別費」を考えておきましょう。
例えば、
「毎月の生活費25万円」
とは別に、
「年間30万円は旅行や家電、冠婚葬祭などに使う」
というように考えます。
老後になってから突然、
「エアコンが壊れた」
「車の買い替えが必要になった」
となっても慌てないよう、生活費とは別の資金を確保しておくと安心です。
4.住宅ローンを老後まで残さない計画を立てる
今回のニュースでは、69歳の男性が75歳まで残る住宅ローンのために働き続けていました。
住宅ローンが必ずしも悪いわけではありません。
ただし、
年金生活になっても毎月返済が続く
という状態は、老後の家計を圧迫する可能性があります。
40代なら、
「今の返済ペースで何歳に完済するのか」
を一度確認してみましょう。
繰り上げ返済をする場合も、手元の生活防衛資金や教育費などとのバランスを考えることが重要です。

5.NISAなどで「年金以外の資産」を作る
老後資金を公的年金だけに頼らず、
自分で準備した資産を作る
ことも選択肢になります。
NISAでは、投資による運用益が非課税となる制度が設けられており、長期的な資産形成の手段として活用できます。
金融庁は2026年8月時点でも、NISAのつみたて投資枠の対象商品を公開しています。
例えば40歳から月2万円を30年間積み立てれば、
元本だけでも720万円
です。
仮に年3%で運用できた場合、単純計算では約1165万円になります。
ただし、投資には元本割れのリスクがあります。
「必ずこれだけ増える」と考えるのではなく、長期・積立・分散を基本に、自分の家計に無理のない金額から始めることが大切です。

6.「働けなくなったとき」の資金も準備する
老後も働くことは、生活費を補う有効な方法です。
しかし、
働けることを老後資金計画の前提にしない
ことも重要です。
「65歳から月5万円働けば大丈夫」
と考えていたとしても、健康や仕事の状況によって計画通りにいかない可能性があります。
だからこそ、
働けなくても最低限生活できる資産
を準備しておきたいところです。
働くことは「老後資金の土台」ではなく、「ゆとりを増やす手段」と考えると、より安心です。
7.「老後の楽しみ」に使うお金も準備する
老後資金というと、
「生活できれば十分」
と考えてしまいがちです。
しかし、老後は人生の大切な時間でもあります。
今回のニュースで紹介された72歳の男性は、友人と釣りをしながらビールを飲んで話すことを楽しみにしていました。
こうした小さな楽しみまで削り続ける生活では、長い老後を豊かに過ごすことが難しくなります。
旅行、趣味、外食、友人との付き合いなど、
「老後に何をして過ごしたいか」
を考え、そのためのお金も少しずつ準備しておきましょう。
老後資金は「いくら貯めるか」だけではない

今回のニュースから考えたいのは、
「老後に2000万円必要なのか?」
という一つの数字ではありません。
大切なのは、
①いくら年金を受け取れるのか
②毎月いくら必要なのか
③毎月いくら不足するのか
④不足分をどう補うのか
を現役時代から考えておくことです。
年金が月15万円でも、生活費が月15万円なら大きな不足はありません。
一方で、年金が月20万円あっても、住宅ローンや車、医療費、趣味などで毎月25万円必要なら、月5万円の不足が発生します。
つまり、必要な老後資金は人によって大きく違います。
40代なら「まだ時間がある」ことが最大の武器

40代から老後までには、まだ20年前後の時間があります。
だからこそ、
「老後が心配だけれど、何から始めればいいかわからない」
という人こそ、まずは小さな一歩から始めてみましょう。
- 将来の年金額を確認する
- 現在の生活費を把握する
- 老後の生活費を試算する
- 住宅ローンの完済時期を確認する
- 特別費を準備する
- NISAなどで長期的な資産形成を始める
- 働けなくなった場合の資金を考える
いきなり1000万円、2000万円を目指す必要はありません。
月1万円、2万円でも、長期間続ければ大きな差になります。
まとめ
今回のニュースに登場したシニアの姿から見えてくるのは、「年金をもらえる=老後は安心」ではないという現実です。
一方で、「老後は働かないと生活できない」と今から悲観する必要もありません。
重要なのは、
年金だけに頼らない
働くことだけにも頼らない
貯蓄だけにも頼らない
ということ。
公的年金を土台にしながら、現役時代の貯蓄、NISAなどによる資産形成、住居費の見直し、そして必要に応じた就労など、複数の方法で老後の収入と資産を準備しておく。
それが、40代からできる「老後への備え」ではないでしょうか。
老後になってから「もっと準備しておけばよかった」と後悔しないためにも、まずは今日、自分の年金見込額と毎月の生活費を確認するところから始めてみましょう。

