「NISAとiDeCo、どちらを優先したらいい?」
「自営業なら小規模企業共済もやったほうがいい?」
「節税になる制度が多すぎて、結局どれを選べばいいかわからない」
自営業者の資産形成では、このような悩みを持つ人も少なくありません。
会社員と違って、自営業者は退職金や厚生年金がないケースも多いため、老後資金だけでなく、自分自身で退職金や将来使うお金を準備する必要があります。
そこで候補になるのが、
- NISA
- iDeCo
- 小規模企業共済
の3つです。
ただし、この3つは「お金を増やす制度」という点では共通していても、目的や税制、資金の引き出しやすさが大きく異なります。
結論から言えば、
NISA=自由に使える資産を作る
iDeCo=老後資金を作りながら節税する
小規模企業共済=自営業者の退職金を作る
と考えると、それぞれの役割がわかりやすくなります。
この記事では、自営業者の視点から3つの制度のメリット・デメリットを比較し、どのような順番で活用すればいいのかを解説します。
NISA・iDeCo・小規模企業共済の違い
まずは3つの制度を比較してみましょう。
| NISA | iDeCo | 小規模企業共済 | |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 資産形成 | 老後資金 | 自営業者の退職金 |
| 運用 | 株式・投資信託など | 投資信託・預金など | 共済制度 |
| 運用益 | 非課税 | 非課税 | 運用益を目的とする制度ではない |
| 掛金の所得控除 | なし | あり | あり |
| 引き出し | いつでも可能 | 原則60歳以降 | 廃業・退任など一定の条件で受け取り |
| 掛金 | 投資額に応じて自由 | 加入区分による | 月1,000~7万円 |
NISAは、年間最大360万円まで投資でき、非課税保有限度額は1,800万円です。運用益が非課税になる一方、掛金そのものは所得控除になりません。
iDeCoは、自分で掛金を拠出して老後資金を準備する制度です。自営業者などの国民年金第1号被保険者は、現行では月6万8,000円が拠出限度額ですが、国民年金基金などの掛金や付加保険料との合算で考える必要があります。
小規模企業共済は、経営者や個人事業主などのための「退職金制度」のような位置づけです。掛金は月1,000円から7万円まで設定でき、全額が所得控除の対象になります。

まずはNISA|自由に使える資産を作る

NISAの大きな特徴は、投資による利益が非課税になることです。
通常、株式や投資信託などの運用で利益が出ると、税金がかかります。
NISAでは一定の範囲内で、その運用益が非課税になります。
現在のNISAでは、
- つみたて投資枠:年間120万円
- 成長投資枠:年間240万円
- 合計:年間360万円
- 非課税保有限度額:1,800万円
となっています。
NISAのメリット
1.必要なときに売却できる
NISAの最大のメリットの一つが、資金の自由度です。
iDeCoのように「原則60歳まで引き出せない」という制約がありません。
例えば、
- 子どもの大学進学
- 車の買い替え
- 住宅の修繕
- 独立・起業資金
- 事業資金
- 老後資金
など、さまざまな目的に使えます。
自営業者にとって、この「自由度」はかなり重要です。
2.運用益が非課税
例えば100万円を投資して120万円になった場合、20万円の利益が出ています。
NISAなら、この利益に対する税金がかからないことが大きなメリットです。
3.老後以外の資金にも使える
「老後資金だけでなく、10年後に使うかもしれないお金も準備したい」という人にはNISAが使いやすいでしょう。
NISAのデメリット
1.掛金が所得控除にならない
NISAは「運用益が非課税」になる制度です。
iDeCoや小規模企業共済のように、掛金そのものを所得から差し引く制度ではありません。
そのため、
今の税金を減らしたい
という目的では、iDeCoや小規模企業共済のほうが有利になるケースがあります。

2.元本保証ではない
NISAはあくまで投資制度です。
購入した商品が値下がりする可能性があります。
「非課税=損をしない」という意味ではない点には注意が必要です。
iDeCo|老後資金を作りながら節税

iDeCoは「個人型確定拠出年金」です。
自分で掛金を拠出し、自分で運用商品を選びながら老後資金を準備します。
自営業者にとって大きなメリットは、掛金が所得控除になることです。
iDeCoのメリット
1.掛金が全額所得控除になる
iDeCoの最大の魅力です。
例えば、年間24万円をiDeCoに拠出した場合、原則としてその24万円が所得控除の対象になります。
実際にどれくらい税金が減るかは、所得税率や住民税などによって異なります。
つまり、
老後資金を積み立てながら、現在の税負担を軽減できる
という点がiDeCoの大きなメリットです。
2.運用益が非課税
NISAと同じように、iDeCoも運用益に税金がかからない仕組みがあります。
そのため、
所得控除+運用益の非課税
という2つの税制メリットがあります。
3.自営業者の老後資金を強化できる
自営業者は会社員のような厚生年金や退職金がない場合があります。
そのため、
「国民年金だけでは老後が心配」
という人にとって、iDeCoは老後資金を補う選択肢になります。
iDeCoのデメリット
1.原則60歳まで引き出せない
これはNISAとの大きな違いです。
iDeCoは老後資金を準備する制度なので、原則として60歳になるまで資産を引き出せません。
そのため、
「教育費に使うかもしれない」
「事業が苦しくなったら使いたい」
「数年後に車を買い替える」
といった資金をiDeCoに入れすぎるのは避けたいところです。
2.所得が少ない年は節税効果が小さくなる
自営業者の場合、毎年の所得が変動することがあります。
所得が低い年は、そもそも所得税の負担が小さいため、所得控除による節税効果も小さくなる可能性があります。
「節税できるから最大額まで入れる」のではなく、事業収入や家計の状況を見ながら掛金を設定することが重要です。
3.運用商品によっては元本割れする
iDeCoには投資信託だけでなく、元本確保型の商品もあります。
投資信託を選ぶ場合は、価格変動によって資産が減る可能性があります。
小規模企業共済|自営業者なら特に注目したい制度

自営業者がNISAやiDeCoと一緒に検討したいのが、小規模企業共済です。
小規模企業共済は、中小機構が運営する制度で、個人事業主や小規模企業の経営者などが、廃業や退職後の生活資金を準備するための「経営者のための退職金制度」と位置づけられています。
小規模企業共済のメリット
1.掛金が全額所得控除
小規模企業共済の大きなメリットです。
掛金は月1,000円から7万円まで、500円単位で設定できます。
年間では最大84万円を掛けられ、その全額が所得控除の対象になります。
例えば月3万円なら、
3万円×12か月=年間36万円
を所得控除できます。
ただし、実際の節税額は所得や税率によって変わります。
2.自営業者の「退職金」を準備できる
会社員の場合は退職金制度がある会社もあります。
一方、自営業者の場合、
「廃業したら退職金がない」
という問題があります。
小規模企業共済は、この部分を補う制度として活用できます。

3.掛金を変更できる
事業収入が安定しない自営業者にとって、掛金を固定しすぎないことも重要です。
小規模企業共済は、月1,000~7万円の範囲で掛金を設定でき、加入後の増額・減額も可能です。
4.貸付制度がある
小規模企業共済には、一定の条件のもとで、納付した掛金をもとにした貸付制度があります。
事業資金などが必要になったときの資金調達手段の一つとして利用できます。
これは、資金の自由度という意味でiDeCoとは大きく異なるポイントです。
小規模企業共済のデメリット
1.短期間で解約すると元本割れの可能性がある
小規模企業共済は「貯金」のようにいつでも元本をそのまま引き出せる制度ではありません。
加入期間や解約理由によっては、受け取れる金額が掛金総額を下回る場合があります。
そのため、
「とりあえず節税のために加入して、すぐ解約する」
という使い方には注意が必要です。
2.事業資金と混同しない
貸付制度があるとはいえ、毎月の事業資金を小規模企業共済に入れすぎるのは避けたいところです。
売上が不安定な自営業者は、
生活防衛資金+事業用の現金
を確保したうえで掛金を設定することが重要です。

3.投資で大きく増やす制度ではない
NISAやiDeCoの投資信託とは目的が違います。
小規模企業共済は、
「投資で資産を大きく増やす」
というより、
「退職金を準備しながら節税する」
という考え方が向いています。
結局、NISA・iDeCo・小規模企業共済はどれを優先?

ここまで見ると、
「結局どれをやればいいの?」
と思うかもしれません。
ポイントは、優先順位を一律に決めないことです。
①生活防衛資金が少ないなら、まず現金
自営業者は会社員以上に現金を確保しておきたいところです。
なぜなら、
- 売上が減る
- 取引先がなくなる
- パソコンなど仕事道具が壊れる
- 税金や社会保険料の支払いが発生する
など、会社員とは違う資金リスクがあるからです。
投資や共済より先に、生活費と事業資金を確保しましょう。
②10~15年以内に使う可能性があるならNISA
教育費や車の買い替えなど、
「60歳までに使う可能性があるお金」
はNISAのほうが使いやすいでしょう。
NISAなら必要なときに売却できます。
特に子育て中の自営業者なら、
教育費をすべてiDeCoに入れる
といった考え方は避けたほうがいいでしょう。

③自営業者の退職金なら小規模企業共済
「老後資金とは別に、自営業者としての退職金を準備したい」
という場合は小規模企業共済が候補になります。
特に所得がある程度あり、所得控除による節税メリットを活用したい人とは相性がよい制度です。
④老後資金をさらに増やしたいならiDeCo
生活防衛資金や教育費などの目処が立ち、
「60歳まで使わないお金を作りたい」
という段階になったらiDeCoを検討します。
自営業者の場合、現在のiDeCoの拠出限度額は月6万8,000円ですが、国民年金基金などとの合算になります。なお、2026年12月からは自営業者等の拠出限度額が月7万5,000円に引き上げられる予定です。
月5万円ならどう配分する?
例えば、
毎月5万円を資産形成に回せる自営業者
なら、次のような考え方ができます。
パターン1|教育費を優先
- NISA:3万円
- 小規模企業共済:2万円
- iDeCo:0円
「近い将来に使う可能性があるお金」を重視する方法です。
パターン2|バランス型
- NISA:2万円
- 小規模企業共済:2万円
- iDeCo:1万円
「使える資産」「退職金」「老後資金」の3つを同時に準備します。
パターン3|老後・節税重視
- NISA:1万円
- 小規模企業共済:2万円
- iDeCo:2万円
老後まで使わないお金を増やしながら、所得控除を活用します。
「節税額が大きい制度」を優先すればいいわけではない
ここは自営業者にとって重要なポイントです。
小規模企業共済やiDeCoは所得控除があるため、
「NISAより節税できるなら、全部そっちに入れたほうがいい」
と考えがちです。
しかし、節税だけで決めるのは危険です。
例えば、子どもの大学進学まであと数年なのに、
教育費までiDeCoに入れてしまう
と、必要な時期に現金化できません。
また、自営業者は売上が大きく変動する可能性があります。
そのため、
節税額ではなく「いつ使うお金なのか」で決める
ことが重要です。

自営業者のお金は「4つ」に分けるとわかりやすい

3制度を上手に使うなら、資産を次の4つに分けて考えてみましょう。
①今使うお金
生活費・税金・事業資金
→ 現金・預貯金
②将来使う可能性があるお金
教育費・車・住宅修繕など
→ NISA
③自営業者としての退職金
廃業・退職後の生活資金
→ 小規模企業共済
④60歳以降に使う老後資金
公的年金だけでは足りない部分
→ iDeCo
このように分けると、3制度の役割が重なりません。
NISA・iDeCo・小規模企業共済の優先順位まとめ
最後に、自営業者向けの考え方をまとめます。
生活防衛資金が足りない
→ まず現金
教育費・車など近い将来使う予定がある
→ NISA
自営業者として退職金を作りたい
→ 小規模企業共済
老後資金を増やしたい
→ iDeCo
所得税・住民税の負担を軽減したい
→ 小規模企業共済・iDeCo
つまり、
NISAとiDeCoと小規模企業共済は「どれか1つを選ぶ」というより、役割を分けて併用する制度と考えるのがポイントです。
まとめ
NISA・iDeCo・小規模企業共済には、それぞれ違ったメリットがあります。
NISA
→ 運用益が非課税。必要なときに使いやすい
iDeCo
→ 掛金が所得控除。運用益も非課税。ただし原則60歳まで引き出せない
小規模企業共済
→ 自営業者の退職金づくり。掛金が全額所得控除
自営業者の場合、特に重要なのは、
「節税できるか」だけでなく「いつ使うお金なのか」
を考えることです。
教育費や事業資金など、近い将来使う可能性があるお金まで老後専用の制度に入れる必要はありません。
まず生活防衛資金を確保し、そのうえで、
使う可能性があるお金 → NISA
自営業者の退職金 → 小規模企業共済
老後まで使わないお金 → iDeCo
と目的別に分けていくと、自分に合った資産形成の形が見えてきます。
※制度の加入条件・掛金上限・受取時の税制などは個人の状況によって異なります。特に自営業者は国民年金基金や付加保険料との関係もあるため、加入前に公式情報を確認してください。

