「住宅ローンの残高が1000万円ある。貯金で繰り上げ返済したほうがいい?」
「それとも、低金利の住宅ローンはそのままにして、NISAで運用したほうが資産を増やせる?」
40代になると、住宅ローンの残高と老後資金の両方が気になってくるものです。
たとえば、住宅ローンの残高が1000万円、残り10年、金利が年1.5%だったとします。
この1000万円を繰り上げ返済すれば、今後支払う利息を減らせます。一方、NISAで運用すれば、資産が増える可能性があります。
では、実際にどちらが有利なのでしょうか。
この記事では、「住宅ローン1000万円・残り10年・金利1.5%」というモデルケースで、繰り上げ返済とNISAを比較します。
結論からいうと、「元本が減るから、必ず早く繰り上げ返済すべき」とは限りません。
住宅ローン金利、住宅ローン控除、手元資金、投資期間、リスク許容度などをまとめて考えることが大切です。
住宅ローン1000万円を繰り上げ返済すると、いくら得?

まずは、1000万円をそのまま返済するケースを考えてみましょう。
シミュレーションの前提
- 住宅ローン残高:1000万円
- 金利:年1.5%
- 残り返済期間:10年
- 返済方法:元利均等返済
- ボーナス返済:なし
この条件では、毎月の返済額は約8万975円、10年間の総返済額は約1077万円です。
つまり、今後支払う利息は約77万円になります。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| ローン残高 | 1000万円 |
| 毎月返済額 | 約8.1万円 |
| 10年間の総返済額 | 約1077万円 |
| 今後支払う利息 | 約77万円 |
この1000万円を今すぐ全額繰り上げ返済すれば、今後発生する約77万円の利息を削減できる計算です。
これは投資のように値下がりすることがないため、繰り上げ返済によるメリットは非常に分かりやすいといえます。
繰り上げ返済は「年1.5%の確実なリターン」と考えられる
繰り上げ返済の大きなメリットは、住宅ローンの利息を減らせることです。
今回の金利は年1.5%。
1000万円を繰り上げ返済することで、将来発生する利息を削減できます。
投資に置き換えて考えるなら、住宅ローン金利という「確実なコスト」を減らす行為と考えることができます。
一方、NISAで年5%の運用を目指しても、5%の利益が保証されるわけではありません。
ここが、繰り上げ返済とNISAを比較するときの重要なポイントです。

では、1000万円をNISAで運用したらどうなる?
次に、住宅ローンを繰り上げ返済せず、1000万円を運用するケースを考えてみます。
仮に年5%で10年間運用できたとすると、
1000万円 → 約1629万円
となります。
運用益は約629万円です。
単純な複利計算では、住宅ローンの利息約77万円を大きく上回ります。
ただし、ここで注意したいのが、「1000万円をNISAに入れれば1629万円になる」という意味ではないことです。
年5%というのは、あくまで仮定した運用利回りです。
実際の投資では、相場が上昇する年もあれば下落する年もあります。
そもそもNISAでは1000万円を1年間で投資できない
もう一つ重要なのが、NISAの年間投資枠です。
現在のNISAでは、年間投資枠は最大360万円です。非課税保有限度額は1800万円となっています。
そのため、1000万円をすべてNISAで投資する場合、1年間で全額を投資することはできません。
たとえば、
- 1年目:360万円
- 2年目:360万円
- 3年目:280万円
というように、複数年に分けて投資する必要があります。
すると、1000万円すべてが10年間運用できるわけではありません。
ここは、「1000万円を年5%で10年間運用すれば1629万円」という単純計算と、実際のNISA運用を区別して考える必要があります。
「繰り上げ返済」と「NISA」どちらが得?
ここまでを整理すると、次のようになります。
| 繰り上げ返済 | NISA | |
|---|---|---|
| メリット | 利息を確実に減らせる | 資産が増える可能性 |
| リターン | 住宅ローン金利分の負担軽減 | 運用成果次第 |
| 元本割れ | 基本的になし | あり |
| 資金の流動性 | 低くなる | 売却すれば現金化可能 |
| 10年後の結果 | ローン残高が減る | 資産が増える可能性 |
| 精神的な安心感 | 大きい | 相場変動への不安あり |
つまり、
「確実性を重視するなら繰り上げ返済」
「資産成長の可能性を重視するならNISA」
という違いがあります。
40代なら「住宅ローン控除」も確認しよう

40代で繰り上げ返済を考えるなら、住宅ローン控除を受けているかどうかも確認しましょう。
住宅ローン減税は、一定の要件を満たす場合、年末の住宅ローン残高などをもとに税額控除を受けられる制度です。
2026年度の住宅ローン減税についても制度が延長・拡充されています。
現在、住宅ローン控除を受けている人は、繰り上げ返済によってローン残高が減ることで、控除額にも影響する可能性があります。
そのため、
「金利が低いから、今すぐ1000万円全部返そう」
と判断する前に、
「住宅ローン控除があと何年残っているか」
を確認しておきましょう。

手元の1000万円を全部使ってしまうのは危険

ここは40代の家庭にとって特に重要です。
住宅ローンを完済できたとしても、手元のお金がほとんどなくなってしまえば安心とはいえません。
40代以降は、
- 子どもの教育費
- 車の買い替え
- 住宅の修繕
- 病気やケガ
- 収入減少
- 親の介護
- 老後資金
など、大きな支出が発生する可能性があります。
そのため、1000万円の貯蓄があるからといって、
1000万円すべてを繰り上げ返済する
という判断は慎重に考えたいところです。
特に、貯蓄が1000万円しかないのであれば、全額を住宅ローン返済に使うよりも、一定額を現金として残しておくほうが安心です。

「繰り上げ返済+NISA」という選択肢もある
実は、繰り上げ返済かNISAかを完全に二択にする必要はありません。
例えば、手元資金1000万円があるなら、
300万円:繰り上げ返済
300万円:NISA
400万円:預貯金
というように分ける方法もあります。
もちろん、適切な金額は家庭によって異なります。
重要なのは、
「住宅ローンを減らすお金」
「将来増やすためのお金」
「すぐ使える現金」
の3つに分けて考えることです。

こんな人は「繰り上げ返済」が向いている

次のような人は、繰り上げ返済を優先する選択肢があります。
1.借金を早くなくしたい
「ローンが残っていること自体がストレス」という人は、繰り上げ返済との相性が良いでしょう。
2.投資の値下がりが怖い
NISAでは元本保証がありません。
「10年後に元本割れしていたら困る」という人は、無理に投資を増やす必要はありません。
3.住宅ローン金利が高い
住宅ローン金利が高くなるほど、繰り上げ返済による利息削減効果は大きくなります。
こんな人は「NISA」を優先する選択肢も
一方で、次のような人はNISAを活用する考え方もあります。
1.長期投資を続けられる
10年以上の長期で運用でき、短期的な値下がりにも耐えられる人です。
2.住宅ローン金利が低い
住宅ローン金利が低ければ、繰り上げ返済による利息削減額も小さくなります。
その場合、余裕資金を長期投資に回すという考え方があります。
3.老後資金が不足しそう
40代から老後まで時間があるなら、住宅ローンだけでなく、老後資金の準備も同時に考える必要があります。

40代は「老後までに住宅ローンをどうするか」で考える

40代で住宅ローン残高が1000万円ある場合、単純に「今返すか、投資するか」だけで考えるのではなく、
60歳、65歳の時点でローンをどうするのか
を考えてみましょう。
例えば残り10年なら、今40歳なら50歳前後で完済する計算です。
一方、残り20年なら60歳前後までローンが続くことになります。
老後まで住宅ローンが残るのであれば、
「退職後の返済をどうするか」
という視点も必要です。

「1000万円あれば全部返済」が正解とは限らない

住宅ローン残高が1000万円あると、
「貯金が1000万円あるなら、全部返済してしまえばいい」
と考えてしまうかもしれません。
しかし、資産形成という視点では、
住宅ローン残高1000万円=負債1000万円
だけを見るのではなく、
現金・投資資産・住宅ローン・今後の収入
をまとめて考えることが重要です。
例えば、
- 現金500万円
- NISA300万円
- 住宅ローン1000万円
という家庭と、
- 現金1000万円
- 投資資産500万円
- 住宅ローン1000万円
という家庭では、同じ「住宅ローン1000万円」でも戦略は変わります。
迷ったら「3つのお金」に分けて考える
40代で住宅ローンとNISAを両立するなら、まず次の3つに分けて考えてみましょう。
① すぐ使うお金
生活費や教育費、急な支出に備える現金です。
② 確実に減らしたい負債
住宅ローンです。
繰り上げ返済をすることで、将来の利息負担を減らせます。
③ 長期的に増やしたいお金
10年以上使う予定のない余裕資金は、NISAなどを活用して長期運用を検討できます。
まとめ:繰り上げ返済とNISAは「どちらが得か」だけで決めない
住宅ローン残高1000万円、金利1.5%、残り10年という条件では、今後支払う利息は約77万円です。
全額を繰り上げ返済すれば、この利息を減らせるメリットがあります。
一方、1000万円を仮に年5%で10年間運用できれば、単純計算では約1629万円になります。
ただし、投資には元本割れの可能性があり、年5%の運用成果が保証されているわけではありません。
また、NISAには年間360万円という投資枠があるため、1000万円を1年間で全額NISAに入れることもできません。
だからこそ、40代の住宅ローン対策では、
「繰り上げ返済かNISAか」
という二択ではなく、
「手元資金をいくら残すか」
「住宅ローンをいつまでに返すか」
「老後資金をいくら準備するか」
の3つをセットで考えることが大切です。
「元本が減るから、早く返済するべき」とも、「NISAのほうが5%だから投資すべき」とも、一概にはいえません。
確実に利息を減らす繰り上げ返済と、将来の資産成長を目指すNISA。自分の家計にとって無理のないバランスを探すことが、40代からの資産形成では重要です。

